正しいなんてあやふやを信仰する愚か

ひとりで生きるための懺悔。大人になる虚しさ。

僕といのち

みんな新しい命がすき
そうあるように作られた命を
そうあるように嗜んで
まるで既存の命が見えないみたい


まだ4年をいっぱい生きたぼくは
老いた順から側に置いた
みぢかい命をたいせつにしたかった
消えそうなあかりの
たいせつな灯りの
壊れそうでこわいくらいの灯り
早朝の車の中から
大嫌いな園への道すがら
ひとり歩く老婆が
どうか幸せでありますように、と

ぼくをたいせつにした
命のおもかげを見て
愛おしむような
ただ、4年の命の語彙では
流れる泪に
可哀想と名付けた


或る花は咲く
或る花は散って
或る花は枯れて
そして或る花は首ごともげて

人間をすこしわかった僕
なんだかをわからなくなるのは
ぼくをたいせつにした命
世を逸脱した理解からうまれる
知らない世の話
今を逸脱した理解からうまれる
予測不能の感情
強く残った自我だけが
理解を置き去りにして

大人になった僕は
もう10年を2回は生きた
大人になった僕は
もう老いた順から側には置けなかった
ぼくを大切にした命は
孤独かもしれない
僕はぼくの願いを
摘んでるかもしれない
大人になった僕は
歪んでしまった僕は
それでも上手く
寄り添えないだろう


みんな新しい命がすき
そうあるように作られた命を
そうあるように嗜んで
まるで既存の命が見えないみたい
理解不能の咆哮に群がる
無償の奉仕を無下にされ
だのにやっぱり可愛がる
逸脱だらけの話を
うんざりして突き放す
同じ人とは思えないくらい

みんな新しい命がすき
そうあるように作られた命を
そうあるように嗜んで
まるで既存の命が見えないみたい
大人になった僕は
今でもそれが悲しくて
僕はこんなところだけ
まだぼくのままで