正しいなんてあやふやを信仰する愚か

ひとりで生きるための懺悔。大人になる虚しさ。

琴線の魚

ベッドの上で命がすくむ
黒の妖精を踊らせては散らせ
無いも同然のちいさな吐息を
すこしでも生きていないように
ころすかなしいくせ

ちいさな指はまるで口のように
心をわからないみたいに彷徨う
目に見えないものを恐れ
心臓の音にさえ怯え
心を許した娯楽の前でも
何かを焦っているようだ
心が落葉に埋もれている
透けた玉座に料理を振舞ってみても
胃が満ちたからといって
見えない穴が塞がることはない

日常の静寂を選ぶことは
鬱陶しい不愉快を呼び寄せる
予感だ 大蛇の如き女の存在だ
ひと睨みで兎を淵に立たす
音は禍々しい重石となり
兎の上に降りそそぐ

逃避し続けることにも疲れるほど
逃避し逃げても逃げても
逃避し続けることはできない
ガラスの中の魚に
逃がしてくれる人はいない
すっかり明けた白い部屋の
ベッドの上でぼくは
命をすくませている