正しいなんてあやふやを信仰する愚か

ひとりで生きるための懺悔。大人になる虚しさ。

私のセピア

愚かなまでに素直だった
残酷でしかない本能のままの子であった
白百合が穏やかな春の風に揺られている
途方もなくまっさらな先であろう
驚くほど雄弁な白であろう
だが歪な運命は既に浮かび上がっていた

ひとつ、
庇いたくなるだろう
それでいて全てを与えてくれたろう
ただどこか、ある境界線を残して
斜陽に皮の厚い手をとってコスモスのほとりを歩いた

遠い記憶への憧憬
今はもう手に入らない時の話
悲しくなる程 今を苦しめる程
私の持つ最も幸福な瞬間

あの人が元気だったこと
子ども故に人をすきでいられたこと
人生の儚く美しい祝福

ふたつ、
熱いシャワーを頭皮から浴びて醜悪を流し
肌に浮立つような匂いの泡を許し
清廉なふうを装うことができる
涼しい夕暮の部屋のラベンダーを吸い込むことだ

ハートをひっくり返して
虫眼鏡で探して
ようやくみつけた
私の持つ幸福な瞬間

最近見えるような気がするのだ
祖父のようになるだろうという呪いが
忌々しい煙の亡霊が





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