正しいなんてあやふやを信仰する愚か

ひとりで生きるための懺悔。大人になる虚しさ。

とも

薬を飲みませんでした。
だから私は死にました。

薬を飲まなかった理由(わけ)は
簡単で複雑で、難解で単純です。
私は薬師を信用できず
服薬は痛みを伴いました。

だから薬を捨てました。
そうして私は死にました。

薬師が居なくなるのを待ち、
ぬっと起き上がった私は
何も持たずにふらふらと
次の国へ行きました。

起き上がった理由(わけ)は
簡単で複雑で、難解で単純です。
私は死んでなどいませんでした。
薬がなくとも生きられました。

それでも全てが嘘ではなくて
ただ少し痛いのです。
生きていると、痛いのです。


あんなに信用した者を
私は再び捨てました。
捨てた私が悪いのに
私はただ、悲しいのです。

これは私が悪いのですか?
他人(ひと)に縋ろうとした罰ですか?
私が信用する者は
いつも私を裏切るのです。
私はただ、悲しいのです。

だから、薬を捨てました。
そうして私は死にました。
その薬師との時間の中の
私を殺して去りました。

薬師は薬師でないのかも
違うのかもしれません。
ただ薬師との時間(とき)の名は
確かに薬でありました。
私には薬でありました。

私は知りませんでした。
薬師にとっての私というのが
一体何なのだろうかと。
私は生涯知りません。

そうして私は平気でなくて、
うんざりとしていながらも
次の国へ発ちました。