正しいなんてあやふやを信仰する愚か

ひとりで生きるための懺悔。大人になる虚しさ。

20211101

しろい太陽のあさの匂いは  橙色の星のはな

中腹を照らす夢  暮れの予感をもよおす

窓枠の内は色褪せた風景画 僕たちは

それぞれに誰かを描いて  思い馳せる

 

凍えるような夜にさえ  胸に灯る紅い熱

愛をささやく心臓は  とうに痺れ青い蜜

その病に効く薬などないと  知っている

医者も猫も  黄色の花も 父も母も

人を惑わす甘言の  冬を呼ぶ甘い香

 

「あそぼう」と絡みつく  人懐っこい秋の風

シャワーのあとの夜風のように  軽薄な温度

ガトーショコラみたいな匂いで

鼻腔を焚きつけて

 

高台の家に  はちきれんばかりの緑

夏の名残り  老夫婦の庭に居残り

 

足元の青い草は  先のほうが赤く熟れ

灰色の四角の 隙間の三角青いのに

葉先の赤い草たちの  群生の端の

淡く焼けた 本のような色の草が

喉を焼く 荒廃の砂に浸る

 

朴念仁の穂も垂れる  僕たちも木のようだ

この葉の色は  寒い時期の服の色

赤を身に入れる青葉は  夕日を閉じ込めている

 

乾いた葉の走る音

見えない鳥が空を鳴らす

秋の花は  人を騙す才に長けている

 

赤い花が僕を見上げていた。

ふと、あの家の玄関を思い出した。

噎せ返るような春も  目を眇めるような夏も  気だるい秋も

棺桶の前で「あなたのような生き方はしたくない」

と言った。僕は 風景画に、亡き聡明な祖母を想った。