しろい太陽のあさの匂いは 橙色の星のはな
中腹を照らす夢 暮れの予感をもよおす
窓枠の内は色褪せた風景画 僕たちは
それぞれに誰かを描いて 思い馳せる
凍えるような夜にさえ 胸に灯る紅い熱
愛をささやく心臓は とうに痺れ青い蜜
その病に効く薬などないと 知っている
医者も猫も 黄色の花も 父も母も
人を惑わす甘言の 冬を呼ぶ甘い香
「あそぼう」と絡みつく 人懐っこい秋の風
シャワーのあとの夜風のように 軽薄な温度
ガトーショコラみたいな匂いで
鼻腔を焚きつけて
高台の家に はちきれんばかりの緑
夏の名残り 老夫婦の庭に居残り
足元の青い草は 先のほうが赤く熟れ
灰色の四角の 隙間の三角青いのに
葉先の赤い草たちの 群生の端の
淡く焼けた 本のような色の草が
喉を焼く 荒廃の砂に浸る
朴念仁の穂も垂れる 僕たちも木のようだ
この葉の色は 寒い時期の服の色
赤を身に入れる青葉は 夕日を閉じ込めている
乾いた葉の走る音
見えない鳥が空を鳴らす
秋の花は 人を騙す才に長けている
赤い花が僕を見上げていた。
ふと、あの家の玄関を思い出した。
噎せ返るような春も 目を眇めるような夏も 気だるい秋も
棺桶の前で「あなたのような生き方はしたくない」
と言った。僕は 風景画に、亡き聡明な祖母を想った。